第3回 飲食店の味を安定させる方法|だし・スープの味が日によって変わる原因

飲食店にとって「おいしい料理を作ること」はもちろん大切です。

しかし、もう一つ重要なのが、

いつ来ても、同じようにおいしいこと

です。

昨日はちょうどよかったのに、今日は少し薄い。

朝に仕込んだスープと、営業途中に追加したスープで味が違う。

料理長が作るとおいしいが、別のスタッフが作ると少し印象が変わる。

こうした「味のぶれ」は、飲食店では珍しいことではありません。

特に、天然素材から取るだしやスープは、同じ材料・同じレシピでも、条件によって仕上がりが変わることがあります。

今回は、だしやスープを例に、

「なぜ味がぶれるのか」

そして、

「どうすれば再現性を高めやすいのか」

を考えてみます。


目次

「同じ材料を使う」だけでは同じ味にならない

たとえば、

昆布10g
水1L

というレシピがあったとします。

同じ昆布10gを使えば、毎回同じだしになるように思えます。

しかし実際には、

  • 水温
  • 浸漬時間
  • 加熱時間
  • 火加減
  • 引き上げるタイミング
  • 攪拌の有無
  • 素材の水分率

などによって、だしの状態は変わります。

つまり、

原料を何g使ったか

だけではなく、

その原料から、どのくらい旨味成分を取り出したか

でが味に影響します。

ここが、天然素材からだしを取るときの難しさの一つです。


だし・スープの味がぶれる6つの原因

1.原料そのものが毎回まったく同じではない

昆布、椎茸、魚介類、野菜などの天然素材は工業製品ではありません。

大きさ、厚み、水分量、産地、季節、保管状態などによって違いがあります。

たとえば同じ10gでも、

薄い素材と厚い素材では表面積が違います。

乾燥状態が違えば、水とのなじみ方も変わります。

そのため、

重量を揃えただけでは、必ずしも抽出状態まで同じになるとは限りません。

2.計量の小さな違いが積み重なる

飲食店では、忙しい時間帯ほど、

「だいたいこのくらい」

という感覚で作る場面もあります。

経験豊富な料理人であれば調整できますが、新しいスタッフまで同じ感覚を共有するのは簡単ではありません。

特に、

  • だし
  • 調味料

などは、少量の違いでも仕上がりに影響する場合があります。

味を安定させるためには、

感覚で作る部分と、数値で固定する部分を分ける

ことが重要です。

3.水量が変わる

意外に見落としやすいのが水量です。

鍋に1L入れたつもりでも、

加熱時間が長ければ蒸発します。

火力が強ければ、さらに減りやすくなります。

つまり、

最初は同じ1Lでも、最終的に残っている液量が違えば濃度も変わります。

だしやスープを安定させる場合には、

「最初に何ml入れたか」だけでなく、「最後に何mlになったか」

も考える必要があります。

4.温度と抽出時間が変わる

天然素材から旨味や香りを取り出す工程では、温度と時間が重要です。

同じ原料でも、

  • 何℃で抽出したか
  • 何分加熱したか
  • 沸騰させたか
  • いつ火を止めたか

によって、取り出される成分や風味の印象が変わります。

そのため、

「10分煮る」

というレシピだけでは不十分な場合があります。

強火で10分と弱火で10分では、条件が違うからです。

5.濾し方や仕上げ方が違う

だしを取った後の処理も味に影響します。

たとえば、

  • ザルで濾す
  • 布で濾す
  • 強く押す
  • 自然に落とす

などによって、液体に残る微粒子や風味が変わります。

スープの場合には、濾した後の煮詰め具合や冷却方法でも印象が変わります。

つまり、抽出が終わった時点で味が完成しているわけではありません。

6.「作る人」が変わる

飲食店では、これが大きな問題になることがあります。

料理長は、

「今日は少し薄いから、あと少し煮よう」

「この昆布なら早めに上げよう」

といった調整を、経験から自然に行っています。

しかし、その判断基準を新人スタッフへそのまま伝えるのは簡単ではありません。

その結果、

レシピは同じなのに、人によって仕上がりが違う

という状態が起こります。

熟練者の「感覚」をどうレシピにするか

料理人の感覚は、とても重要です。

すべてを数値化すればよいということではありません。

むしろ、

  • 火入れ
  • 塩加減
  • 香り
  • 食感
  • 盛り付け

など、最後の判断は料理人の技術だからこそ価値があります。

ただし、

毎日繰り返す基本の仕込みまで、すべて熟練者の感覚に頼る必要があるか

は別の問題です。

たとえば、

固定できる部分

  • 水量
  • 原料重量
  • 加熱時間
  • 温度
  • 仕上がり量
  • 使用量

は数値化する。

その上で、

料理人が判断する部分

  • 最後の塩味
  • 香り
  • 濃度
  • 盛り付け
  • 料理とのバランス

を残す。

この分け方をすると、再現性と料理人の感覚を両立しやすくなります。

「原料の重量」と「料理に出た旨味」は同じではない

ここは、だしの味を安定させる上で重要なポイントです。

たとえば昆布10gを使ったとしても、

その10gに含まれる成分がすべて水へ移るわけではありません。

実際にどの程度利用できるかは、

抽出条件によって変わります。

つまり、

昆布10gを使った

という情報と、

その料理にどれくらいの旨味が入った

という情報は同じではありません。

ここが、天然素材を煮出す方法でレシピ管理を難しくする理由の一つです。

「抽出条件を揃える」という方法

従来のだし取りで味を安定させるのであれば、まず重要なのは条件を固定することです。

たとえば、

昆布○g
水○ml
水温○℃
浸漬○分
加熱○分
仕上がり○ml

というように管理します。

さらに、

使用する鍋、火力、濾過方法なども一定にできれば、再現性は高まりやすくなります。

これは、本格的にだしを取る料理では非常に有効です。

仕込み時間を、準備・加熱・濾過・保存・洗浄まで含めて見直す考え方については、こちらの記事で詳しく解説しています。

もう一つの方法は「抽出工程そのものを減らす」こと

一方で、すべての料理についてここまで抽出条件を管理する必要があるでしょうか。

たとえば、

  • 煮物の下支え
  • 炊き込みご飯
  • ソース
  • パスタ
  • リゾット
  • スープの補強

などでは、

だしそのものを味わうというより、料理に旨味を加えることが目的

の場合があります。

そこで考えられるのが、

抽出条件を揃えるのではなく、抽出工程そのものを減らす

という方法です。

一般的な素材粉末でも「抽出」の影響は残る

ここで注意したいのが、

「素材を粉末にすれば必ず味が安定する」というわけではない

という点です。

昆布や椎茸、魚介などを乾燥させて粉砕した素材粉末でも、素材組織の中に成分が残っていれば、水や料理に加えた後に成分を取り出す工程が必要になります。

その場合、

  • 温度
  • 時間
  • 水量

などの影響は残ります。

そのため、同じ5gを使っても、使い方によって料理に現れる旨味の強さが変わる可能性があります。


PRE-TASU(プレタス)では「使用量」を基準に味を管理しやすい

PRE-TASU(プレタス)では、かつお、昆布、椎茸、いりこ、鯛などを瞬間高温高圧焼成法によって加工しています。

この加工によって素材組織が変化しているため、長時間煮出して成分を取り出す方法だけではなく、水や料理へ加えて混ぜ、短時間で素材の旨味を利用するという使い方ができます。

そこでレシピを、

水500ml + PRE-TASU○g

ソース100g + PRE-TASU○g

という形で管理しやすくなります。

つまり、

「何分煮出したか」ではなく、「何g使用したか」を基準に味を組み立てやすい

ということです。

これは、

  • 人が変わったとき
  • 店舗が増えたとき
  • 新人スタッフへ教えるとき
  • 営業途中に追加するとき

にも使いやすい考え方です。

営業途中の「追いだし」でも味を合わせやすい

たとえば、朝に5Lのスープを用意したとします。

営業途中で1L不足した場合、従来の天然だしでは、

再び素材を用意し、抽出条件を合わせて1Lを作る必要があります。

ここで条件が変われば、

朝の5Lと追加した1Lの味が少し違う

ということも起こり得ます。

PRE-TASUのように使用量を基準にできれば、

水1Lに対して○g

という同じ配合で追加することができます。

つまり、

必要な量だけ作る「追いだし」と、味の再現性を両立しやすい

という考え方です。

味の安定は「料理人を不要にすること」ではない

味を数値化するという話をすると、

「料理人の感覚をなくしてしまうのでは?」

と思われるかもしれません。

しかし目的は逆です。

毎日繰り返す基本部分を安定させることで、

料理人は、

  • 最後の味の調整
  • 食材に合わせた火入れ
  • 香りの組み立て
  • 盛り付け
  • 新しい料理の開発

といった、料理人にしかできない部分へ集中しやすくなります。

飲食店で味を安定させるための5つの確認ポイント

日々の仕込みでは、次の5点を確認してみると整理しやすくなります。

  1. 原料重量だけでなく、抽出条件まで決めているか
  2. 水量や最終的な仕上がり量を管理しているか
  3. 作る人によって変わる工程はどこか
  4. 本当に抽出が必要な料理なのか
  5. グラム数で固定できる部分はないか

すべての料理を画一化する必要はありません。

むしろ、

「固定する部分」と「料理人が判断する部分」を分ける

ことが重要です。

「いつ来ても同じ味」をつくるために

飲食店の味を安定させるためには、単にレシピを書くだけでは十分ではありません。

なぜなら、天然素材から旨味を取り出す料理では、

材料+時間+温度+人の判断

によって完成するからです。

だからこそ、

だしそのものが主役の料理では、抽出条件をきちんと管理する。

一方、料理の下支えとして旨味を加える場合には、抽出工程を簡略化し、使用量で管理する。

こうした使い分けによって、

「料理人が変わっても基本の味は変わりにくい」

という仕組みを作ることができます。


前回の記事

この記事の冒頭または「もう一つの方法は『抽出工程そのものを減らす』こと」の前に、

仕込み時間を、準備・加熱・濾過・保存・洗浄まで含めて見直す考え方については、こちらの記事で詳しく解説しています。

として、

「飲食店の仕込み時間を短縮するには?だし・スープづくりから見直す方法」

へ内部リンクを設定します。

また、第1回の記事へも記事末の「関連記事」で、

を入れてよいです。

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