第10回 飲食店のだし濃度を安定させる方法|g・%・希釈倍率で味のブレを減らす

飲食店でだしやスープを仕込んでいると、

「昨日と少し味が違う」

「担当者によって濃さが変わる」

「煮詰まり具合で毎回調整が必要になる」

といったことがあります。

味見はもちろん大切ですが、毎回感覚だけで仕上げていると、どうしても人による差が出やすくなります。

そこで役立つのが、

g・%・希釈倍率などを使った濃度管理です。

数値で基準をつくっておくことで、経験のある料理人だけでなく、複数のスタッフでも同じ味を再現しやすくなります。

今回は、飲食店で使いやすいだしの濃度管理について整理します。


目次

だしの味が毎回変わる原因

同じ材料、同じレシピで仕込んでいても、だしの味が変わることがあります。

主な原因として、

  • 水の量・硬度等
  • だし素材の重量・水分量
  • 抽出時間
  • 加熱温度
  • 煮詰まり
  • 濾過後の液量
  • 原料そのものの違い
  • スタッフによる計量差

などがあります。

特に昔からの仕込みでは、

「昆布をこのくらい」

「カツオをひとつかみ」

「味を見ながら水を足す」

といった感覚的な管理も少なくありません。

熟練者には問題がなくても、スタッフが増えたときには再現性が下がることがあります。


まず「重量」で管理する

だしの濃度管理で最初に取り入れやすいのが、

水とだし素材をgで計量することです。

たとえば、

水1,000gに対して、だし素材10g

と決めておけば、誰が作っても同じスタート地点をつくれます。

液体はmlで計ることもできますが、厨房では重量計を使ってgで統一した方が管理しやすい場合があります。

ボウルや鍋をそのままスケールに乗せて計量できるためです。


「%」で考えるとレシピを拡大しやすい

だし素材の使用量は、

水または仕上がり液量に対する割合

として管理することもできます。

たとえば、水1,000gに対して粉末を10g使用した場合、

10 ÷ 1,000 × 100

となり、

1%

です。

同じ考え方なら、

  • 0.5% → 水1,000gに対して5g
  • 1% → 水1,000gに対して10g
  • 2% → 水1,000gに対して20g
  • 3% → 水1,000gに対して30g

となります。

この方法の良いところは、仕込み量が変わっても簡単に計算できることです。

たとえば5L仕込む場合でも、

1%なら50g

とすぐに換算できます。


粉末素材は「%管理」と相性が良い

粉末素材は、g単位で計量できるため、濃度を数値化しやすい特徴があります。

たとえば、

昆布0.5%

鯛0.3%

椎茸0.1%

といった形で記録すれば、単に、

「昆布と鯛を少し入れる」

というレシピよりも再現しやすくなります。

また、試作時にも、

0.2%では弱い

0.4%ではちょうど良い

0.6%では少し強い

という比較ができます。

こうした記録を残すことで、料理ごとの適正量を見つけやすくなります。


液体だしは「希釈倍率」で管理しやすい

濃縮タイプの液体だしでは、

希釈倍率

で管理する方法が一般的です。

たとえば、

1:10

であれば、

液体だし1に対して水10

という考え方です。

ただし、商品によっては、

「10倍希釈」

「だし1:水9」

など、表示方法が異なることがあります。

ここは混乱しやすいため、店舗のレシピでは、

だし100g+水900g

のように、実際に使う重量まで書いておくと分かりやすくなります。


「投入量」と「仕上がり量」は別に考える

だしの濃度管理で注意したいのが、

最初に入れた水の量と、仕上がった液量が同じとは限らない

という点です。

加熱すると水分が蒸発します。

さらに、

  • 昆布
  • 椎茸
  • 野菜
  • 魚介

などが水分を吸うこともあります。

たとえば、

水10Lから仕込みを始めても、完成後は8.5Lになっていることがあります。

この場合、

同じ材料を入れていても、最終的な濃度は高くなります。

したがって、再現性を高めるには、

投入量だけでなく仕上がり量も記録する

ことが重要です。


煮詰まりによる味の変化

スープやソースでは、営業中も加熱を続けることがあります。

すると徐々に水分が蒸発して、

  • 塩味
  • 甘味
  • 旨味
  • 香り

が濃くなっていきます。

仕込み直後はちょうど良くても、数時間後には濃く感じることがあります。

この場合、

「味が濃くなったから水を入れる」

という感覚的な調整ではなく、

基準となる液量まで戻す

という方法を決めておくと安定します。

たとえば、

営業開始時10kg

休憩前9.3kg

であれば、

700gの水を戻す

という管理です。


「味見+数値」が最も実用的

数値で管理するといっても、

味見が不要になるわけではありません。

食材には個体差があります。

昆布、魚、野菜などの天然素材は、季節や産地によっても違います。

そのため、

数値で基本を合わせて、最後は味見で確認する

という方法が現実的です。

数値だけに頼るのではなく、

数値を味見のスタート地点として使う

という考え方です。


Brixはだし管理に使える?

液体の濃度を確認する方法として、糖度計や屈折計で測定するBrixがあります。

Brixは本来、溶液中の可溶性成分による屈折率をもとにした指標です。

そのため、だしを測定した場合、

糖分だけではなく、

  • 塩分
  • アミノ酸
  • 有機酸
  • ミネラル
  • その他の水溶性成分

などの影響も受けます。

したがって、

Brix=旨味の量

ではありません。

ただし、

同じ原料・同じ条件のだしを比較する場合には、

「前回より濃い」

「今回の抽出は薄い」

といった相対的な管理指標として活用できる場合があります。

重要なのは、Brixの数値だけでおいしさを判断しないことです。


店舗では「基準値」を持っておくと便利

たとえばあるスープについて、

  • 水:5,000g
  • だし素材:50g
  • 使用率:1%
  • 仕上がり重量:4,800g

という標準レシピを設定します。

さらに、

この状態を基準の味

として記録しておきます。

次回以降は、

材料重量

仕上がり重量

味見

の順で確認します。

こうすることで、

「今日少し濃い」

という感覚だけではなく、

「今日は仕上がり量が150g少ない」

という原因まで確認できます。


複数のだし素材を使う場合

第8回では、

昆布=土台

カツオ=香り・和食らしさ

椎茸=厚み・余韻

いりこ=魚介感・輪郭

鯛=上品な魚介の旨味

という役割を整理しました。

複数素材を組み合わせる場合も、割合で管理すると分かりやすくなります。

たとえば、

  • 昆布 0.5%
  • 鯛 0.3%
  • 椎茸 0.1%

とします。

合計では0.9%ですが、単に0.9%のだしではなく、

どの素材を何%使っているか

まで残しておくことが重要です。


PRE-TASU(プレタス)では少量調整を数値化しやすい

PRE-TASU(プレタス)の焼昆布、焼椎茸、焼いりこ、焼鯛などの粉末素材は、料理へ直接加えながら調整できます。

細胞膜、細胞壁が壊れているためg数に応じた旨味がブレなく抽出できます。

この特徴を活かすと、

「少し魚介感が足りないから鯛を加える」

という場合にも、

感覚だけではなく、

1kgに対して1g

1kgに対して2g

といった形で記録できます。

これを%にすると、

1g/1,000g=0.1%です。

次回から同じ数値で再現できるため、

追いだしの量まで標準化できます。


「レシピ」から「基準表」へ

飲食店で味を安定させるには、料理ごとに簡単な基準表を作る方法もあります。

たとえば、

項目基準
5,000g
昆布粉末25g
鯛粉末15g
使用率0.8%
仕上がり量4,800g
調整範囲±0.1%

という形です。

このようにしておけば、

新人スタッフでも、

「何となくこのくらい」

ではなく、数字を確認しながら仕込めます。


数値化すると改善もしやすくなる

濃度管理には、味を安定させる以外のメリットもあります。

たとえば、

「もう少し鯛を感じさせたい」

というとき、

現在0.2%なら、次の試作は0.3%にする。

その次は0.4%。

という比較ができます。

これによって、

料理開発そのものも検証しやすくなります。

スタッフ同士でも、

「もう少し多め」

ではなく、

「0.1%上げてみる」

という共通言語で話せるようになります。


まとめ

だしの味を安定させるためには、

感覚だけに頼らず、

g・%・希釈倍率・仕上がり量

を使って管理することが有効です。

特に重要なのは、

  • 水と素材をgで計る
  • 使用率を%で記録する
  • 液体だしは希釈量を明確にする
  • 仕上がり量まで確認する
  • 最後は味見で確認する

という考え方です。

そして粉末素材であれば、

追いだしや微調整の量まで数字で残す

ことができます。

これによって、

料理人の感覚を否定するのではなく、

料理人の感覚を誰でも再現できる形に変えることができます。

飲食店の標準化では、ここが非常に重要です。

次回は、

「だしを後から足す『追い旨味』という考え方」

について、料理の完成後に味を調整する方法を整理します。

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