飲食店でだしやスープを仕込んでいると、
「昨日と少し味が違う」
「担当者によって濃さが変わる」
「煮詰まり具合で毎回調整が必要になる」
といったことがあります。
味見はもちろん大切ですが、毎回感覚だけで仕上げていると、どうしても人による差が出やすくなります。
そこで役立つのが、
g・%・希釈倍率などを使った濃度管理です。
数値で基準をつくっておくことで、経験のある料理人だけでなく、複数のスタッフでも同じ味を再現しやすくなります。
今回は、飲食店で使いやすいだしの濃度管理について整理します。
だしの味が毎回変わる原因
同じ材料、同じレシピで仕込んでいても、だしの味が変わることがあります。
主な原因として、
- 水の量・硬度等
- だし素材の重量・水分量
- 抽出時間
- 加熱温度
- 煮詰まり
- 濾過後の液量
- 原料そのものの違い
- スタッフによる計量差
などがあります。
特に昔からの仕込みでは、
「昆布をこのくらい」
「カツオをひとつかみ」
「味を見ながら水を足す」
といった感覚的な管理も少なくありません。
熟練者には問題がなくても、スタッフが増えたときには再現性が下がることがあります。
まず「重量」で管理する
だしの濃度管理で最初に取り入れやすいのが、
水とだし素材をgで計量することです。
たとえば、
水1,000gに対して、だし素材10g
と決めておけば、誰が作っても同じスタート地点をつくれます。
液体はmlで計ることもできますが、厨房では重量計を使ってgで統一した方が管理しやすい場合があります。
ボウルや鍋をそのままスケールに乗せて計量できるためです。
「%」で考えるとレシピを拡大しやすい
だし素材の使用量は、
水または仕上がり液量に対する割合
として管理することもできます。
たとえば、水1,000gに対して粉末を10g使用した場合、
10 ÷ 1,000 × 100
となり、
1%
です。
同じ考え方なら、
- 0.5% → 水1,000gに対して5g
- 1% → 水1,000gに対して10g
- 2% → 水1,000gに対して20g
- 3% → 水1,000gに対して30g
となります。
この方法の良いところは、仕込み量が変わっても簡単に計算できることです。
たとえば5L仕込む場合でも、
1%なら50g
とすぐに換算できます。
粉末素材は「%管理」と相性が良い
粉末素材は、g単位で計量できるため、濃度を数値化しやすい特徴があります。
たとえば、
昆布0.5%
鯛0.3%
椎茸0.1%
といった形で記録すれば、単に、
「昆布と鯛を少し入れる」
というレシピよりも再現しやすくなります。
また、試作時にも、
0.2%では弱い
0.4%ではちょうど良い
0.6%では少し強い
という比較ができます。
こうした記録を残すことで、料理ごとの適正量を見つけやすくなります。
液体だしは「希釈倍率」で管理しやすい
濃縮タイプの液体だしでは、
希釈倍率
で管理する方法が一般的です。
たとえば、
1:10
であれば、
液体だし1に対して水10
という考え方です。
ただし、商品によっては、
「10倍希釈」
「だし1:水9」
など、表示方法が異なることがあります。
ここは混乱しやすいため、店舗のレシピでは、
だし100g+水900g
のように、実際に使う重量まで書いておくと分かりやすくなります。
「投入量」と「仕上がり量」は別に考える
だしの濃度管理で注意したいのが、
最初に入れた水の量と、仕上がった液量が同じとは限らない
という点です。
加熱すると水分が蒸発します。
さらに、
- 昆布
- 椎茸
- 野菜
- 肉
- 魚介
などが水分を吸うこともあります。
たとえば、
水10Lから仕込みを始めても、完成後は8.5Lになっていることがあります。
この場合、
同じ材料を入れていても、最終的な濃度は高くなります。
したがって、再現性を高めるには、
投入量だけでなく仕上がり量も記録する
ことが重要です。
煮詰まりによる味の変化
スープやソースでは、営業中も加熱を続けることがあります。
すると徐々に水分が蒸発して、
- 塩味
- 甘味
- 旨味
- 香り
が濃くなっていきます。
仕込み直後はちょうど良くても、数時間後には濃く感じることがあります。
この場合、
「味が濃くなったから水を入れる」
という感覚的な調整ではなく、
基準となる液量まで戻す
という方法を決めておくと安定します。
たとえば、
営業開始時10kg
休憩前9.3kg
であれば、
700gの水を戻す
という管理です。
「味見+数値」が最も実用的
数値で管理するといっても、
味見が不要になるわけではありません。
食材には個体差があります。
昆布、魚、野菜などの天然素材は、季節や産地によっても違います。
そのため、
数値で基本を合わせて、最後は味見で確認する
という方法が現実的です。
数値だけに頼るのではなく、
数値を味見のスタート地点として使う
という考え方です。
Brixはだし管理に使える?
液体の濃度を確認する方法として、糖度計や屈折計で測定するBrixがあります。
Brixは本来、溶液中の可溶性成分による屈折率をもとにした指標です。
そのため、だしを測定した場合、
糖分だけではなく、
- 塩分
- アミノ酸
- 有機酸
- ミネラル
- その他の水溶性成分
などの影響も受けます。
したがって、
Brix=旨味の量
ではありません。
ただし、
同じ原料・同じ条件のだしを比較する場合には、
「前回より濃い」
「今回の抽出は薄い」
といった相対的な管理指標として活用できる場合があります。
重要なのは、Brixの数値だけでおいしさを判断しないことです。
店舗では「基準値」を持っておくと便利
たとえばあるスープについて、
- 水:5,000g
- だし素材:50g
- 使用率:1%
- 仕上がり重量:4,800g
という標準レシピを設定します。
さらに、
この状態を基準の味
として記録しておきます。
次回以降は、
材料重量
↓
仕上がり重量
↓
味見
の順で確認します。
こうすることで、
「今日少し濃い」
という感覚だけではなく、
「今日は仕上がり量が150g少ない」
という原因まで確認できます。
複数のだし素材を使う場合
第8回では、
昆布=土台
カツオ=香り・和食らしさ
椎茸=厚み・余韻
いりこ=魚介感・輪郭
鯛=上品な魚介の旨味
という役割を整理しました。
複数素材を組み合わせる場合も、割合で管理すると分かりやすくなります。
たとえば、
- 昆布 0.5%
- 鯛 0.3%
- 椎茸 0.1%
とします。
合計では0.9%ですが、単に0.9%のだしではなく、
どの素材を何%使っているか
まで残しておくことが重要です。

PRE-TASU(プレタス)では少量調整を数値化しやすい
PRE-TASU(プレタス)の焼昆布、焼椎茸、焼いりこ、焼鯛などの粉末素材は、料理へ直接加えながら調整できます。
細胞膜、細胞壁が壊れているためg数に応じた旨味がブレなく抽出できます。
この特徴を活かすと、
「少し魚介感が足りないから鯛を加える」
という場合にも、
感覚だけではなく、
1kgに対して1g
1kgに対して2g
といった形で記録できます。
これを%にすると、
1g/1,000g=0.1%です。
次回から同じ数値で再現できるため、
追いだしの量まで標準化できます。
「レシピ」から「基準表」へ
飲食店で味を安定させるには、料理ごとに簡単な基準表を作る方法もあります。
たとえば、
| 項目 | 基準 |
|---|---|
| 水 | 5,000g |
| 昆布粉末 | 25g |
| 鯛粉末 | 15g |
| 使用率 | 0.8% |
| 仕上がり量 | 4,800g |
| 調整範囲 | ±0.1% |
という形です。
このようにしておけば、
新人スタッフでも、
「何となくこのくらい」
ではなく、数字を確認しながら仕込めます。
数値化すると改善もしやすくなる
濃度管理には、味を安定させる以外のメリットもあります。
たとえば、
「もう少し鯛を感じさせたい」
というとき、
現在0.2%なら、次の試作は0.3%にする。
その次は0.4%。
という比較ができます。
これによって、
料理開発そのものも検証しやすくなります。
スタッフ同士でも、
「もう少し多め」
ではなく、
「0.1%上げてみる」
という共通言語で話せるようになります。
まとめ
だしの味を安定させるためには、
感覚だけに頼らず、
g・%・希釈倍率・仕上がり量
を使って管理することが有効です。
特に重要なのは、
- 水と素材をgで計る
- 使用率を%で記録する
- 液体だしは希釈量を明確にする
- 仕上がり量まで確認する
- 最後は味見で確認する
という考え方です。
そして粉末素材であれば、
追いだしや微調整の量まで数字で残す
ことができます。
これによって、
料理人の感覚を否定するのではなく、
料理人の感覚を誰でも再現できる形に変えることができます。
飲食店の標準化では、ここが非常に重要です。
次回は、
について、料理の完成後に味を調整する方法を整理します。
- 第1回 飲食店のだし取りを効率化する方法|仕込み時間・人手・味の安定を考える
- 第2回 飲食店の仕込み時間を短縮するには?だし・スープづくりから見直す方法
- 第3回 飲食店の味を安定させる方法|だし・スープの味が日によって変わる原因
- 第4回 飲食店の人手不足対策|仕込みを簡略化して調理と教育の負担を減らす考え方
- 第5回 必要な分だけだしを作る方法|飲食店の小ロット調理と食品ロス対策
- 第6回 和食のだし取りを効率化する方法|かつお・昆布・椎茸・いりこの使い分け
- 第7回 洋食のブイヨン・フォンの仕込みを効率化する方法|スープ・ソースへの活用
- 第8回 昆布・椎茸・いりこ・カツオ・鯛のだしはどう違う?料理別の使い分けを比較
- 第9回 粉末だしと液体だしの違い|飲食店ではどう使い分ける?
- 第10回 飲食店のだし濃度を安定させる方法|g・%・希釈倍率で味のブレを減らす
- 第11回 飲食店の「追い旨味」とは?仕上げで味を整えるだしの使い方
- 第12回 「だしを取る」から「だしを組み立てる」へ|料理人が素材から旨味を設計する方法

