11回 飲食店の「追い旨味」とは?仕上げで味を整えるだしの使い方

飲食店の「追い旨味」とは?仕上げで味を整えるだしの使い方

料理を仕上げる直前に、

「もう少し旨味が欲しい」

「魚介感を少しだけ足したい」

「後味にもう少し厚みが欲しい」

と感じることがあります。

このとき、塩や醤油を足すだけでは、味が濃くなりすぎることがあります。

そこで考えたいのが、

不足している旨味だけを後から補う「追い旨味」

という考え方です。

今回は、飲食店で使いやすい追い旨味の考え方と、素材ごとの使い分けについて整理します。


目次

「追い旨味」とは?

追い旨味とは、料理がほぼ完成した段階で、

不足している旨味や香りの要素だけを少量加えて調整する方法

です。

たとえば、

  • 昆布で土台を足す
  • 椎茸で厚みを加える
  • いりこで魚介感を強める
  • 鯛で上品な魚介の旨味を足す
  • カツオで香りを補う

といった使い方です。

重要なのは、

味全体を濃くするのではなく、足りない部分だけを補う

という点です。


なぜ仕上げで味が足りなくなるのか

レシピ通りに作っていても、毎回まったく同じ味になるとは限りません。

その理由には、

  • 食材そのものの個体差
  • 水分量の違い
  • 煮詰まり具合
  • 加熱時間
  • 仕込み量
  • 盛り付け量
  • 他の調味料とのバランス

などがあります。

特に野菜や魚は、季節や産地によって味の強さが変わります。

そのため、

レシピは同じでも、最後に微調整が必要になる

ことがあります。


「塩を足す」と「旨味を足す」は違う

料理が物足りないと感じたとき、最初に塩を足すことがあります。

しかし、

物足りなさ=塩味不足

とは限りません。

実際には、

  • 旨味の土台が弱い
  • 中味が薄い
  • 後味が短い
  • 魚介の輪郭が弱い
  • 香りが足りない

という場合もあります。

ここで塩を足し続けると、

旨味はそれほど増えていないのに、

塩味だけが強くなる

ことがあります。

追い旨味は、この問題を避けやすい方法です。


まず「何が足りないか」を考える

追い旨味では、

「何か足りない」

で終わらせず、

何が足りないのか

を整理します。

たとえば、

味全体が薄く感じる

→ 昆布

魚介の存在感が弱い

→ いりこ

もう少し上品な魚介感が欲しい

→ 鯛

中味から後味が短い

→ 椎茸

和食らしい香りが弱い

→ カツオ

という考え方ができます。


先味・中味・後味で考える

追い旨味は、

先味・中味・後味

という時間軸で考えると、さらに分かりやすくなります。

料理を食べたとき、

最初に感じる味と、

口の中に広がる味、

飲み込んだ後に残る味は違います。

大まかに整理すると、

  • 先味:香り・塩味・輪郭
  • 中味:旨味・コク
  • 後味:余韻・持続感

です。

たとえば、

最初はおいしいけれど、すぐ味が消える場合は、

中味や後味が足りない

可能性があります。

この場合、塩を足すよりも、

椎茸や鯛などの素材で余韻を補う方が自然な場合があります。


昆布の追い旨味

昆布は、

料理全体の土台を補いたいとき

に使いやすい素材です。

たとえば、

  • 野菜スープ
  • 吸い物
  • 煮物
  • 白身魚料理
  • ソース

などで、

「全体的に旨味が弱い」

と感じたときに使えます。

昆布は香りが強すぎないため、

主役の食材を邪魔しにくいのも特徴です。


椎茸の追い旨味

椎茸は、

中味から後味の厚みを補う

のに向いています。

特に、

  • 野菜料理
  • 煮込み
  • ソース
  • スープ
  • あんかけ

などで、

「口に入れた瞬間は良いけれど、余韻が弱い」

というときに使いやすい素材です。

椎茸を少量加えることで、味に長さが出やすくなります。


いりこの追い旨味

いりこは、

魚介感や味の輪郭を出したいとき

に向いています。

たとえば、

  • 味噌汁
  • うどんだし
  • 魚介スープ

などです。

魚介感をはっきり出せる一方、

入れすぎると主張が強くなることがあります。

そのため、

少量ずつ加えて調整するのがポイントです。


鯛の追い旨味

鯛は、

魚介感は欲しいが、強すぎる風味は避けたい

ときに使いやすい素材です。

たとえば、

  • 白身魚のスープ
  • 澄んだ吸い物
  • ソース
  • コンソメ
  • 野菜料理

などです。

いりこのような強い魚介感ではなく、

上品で自然な魚の旨味

を加えたい場合に向いています。


カツオの追い旨味

カツオは、

香りの立ち上がりを補いたいとき

に使いやすい素材です。

ただし、香りは加熱によって飛びやすいため、

追い旨味として使う場合は、

仕上げに近い段階で加える考え方が向いています。

和食らしさを出したい料理では特に効果的です。


追い旨味は「少量」が基本

追い旨味は、

一度に大量に加えるものではありません。

基本は、

少量ずつ加えて確認する

ことです。

たとえば、

1kgの料理に対して、

0.1%

であれば、

1gです。

まず1g加えて味を確認する。

まだ弱ければ、

さらに0.5g〜1g加える。

このようにすると、入れすぎを防ぎやすくなります。


数値で残すと再現できる

第10回では、

g・%・希釈倍率で濃度を管理する方法を紹介しました。

追い旨味も、同じように数字で残すことができます。

たとえば、

スープ1kgに対して、

  • 昆布 1g
  • 鯛 0.5g
  • 椎茸 0.3g

を追加したところ、味がまとまった。

と記録しておけば、

次回から同じ条件で再現できます。

つまり、

料理人の微調整をレシピ化できる

ということです。


PRE-TASU(プレタス)の粉末素材は追い旨味に向いている

PRE-TASU(プレタス)の焼昆布、焼椎茸、焼いりこ、焼鯛などは、

瞬間高温高圧焼成によって加工されています。

粉末素材として使えるため、

通常のだし取りのように再度煮出す必要がなく、

料理へ直接加えて調整できる

という特徴があります。

通常であれば、

「魚介感が足りない」

と思っても、

新たにだしを取る必要があります。

粉末素材であれば、

必要な素材を少量加えて、

その場で調整できます。


仕込み直しを減らせる可能性

飲食店では、

仕込み後に味が弱いと、

だしを追加したり、

煮詰め直したり、

調味料を足したりすることがあります。

しかし、

追い旨味という考え方を持っておくと、

大きく作り直さずに微調整

できる場合があります。

これは、

  • 仕込み時間の短縮
  • 廃棄の削減
  • 味の安定
  • スタッフ間の共有

にもつながります。


「追い旨味」と「追いだし」は少し違う

追いだしという言葉は、

追加でだしを加える意味で使われることがあります。

一方、ここで紹介している追い旨味は、

単にだしを増やすのではなく、

不足している役割を選んで補う

という考え方です。

たとえば、

魚介感が足りないから、

だし全体を濃くするのではなく、

いりこや鯛だけを少量加える。

厚みが足りないから、

椎茸だけを追加する。

このように、

目的を決めて素材を選ぶ

のがポイントです。


完成した料理を「分解して見る」

追い旨味をうまく使うには、

完成した料理を、

「おいしい・おいしくない」

だけで判断しないことが重要です。

たとえば、

  • 土台はあるか
  • 香りはあるか
  • 魚介感はあるか
  • 中味に厚みがあるか
  • 後味が残るか

というように分解して考えます。

すると、

何を加えるべきかが見えやすくなります。

これは料理開発にも使える考え方です。


まとめ

追い旨味とは、

料理の完成後に、

不足している旨味や香りだけを補う方法

です。

ポイントは、

何となく調味料を足すのではなく、

何が不足しているかを見極める

ことです。

たとえば、

  • 土台 → 昆布
  • 香り → カツオ
  • 厚み・余韻 → 椎茸
  • 魚介感・輪郭 → いりこ
  • 上品な魚介の旨味 → 鯛

という考え方ができます。

さらに、

gや%で追加量を記録すれば、

微調整まで再現可能なレシピ

に変えることができます。

飲食店の味を安定させるためには、

最初から完璧な味を作ることだけでなく、

最後にどう整えるか

という考え方も重要です。

次回は、

 「だしを取る」から「だしを組み立てる」へ|料理人が素材から旨味を設計する方法

について、魚介の旨味を野菜料理・スープ・ソースへどう活かすかを整理します。

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