和食のだしは、すべて同じでなくてもよい
和食にとって、だしは料理の土台です。
吸い物、煮物、茶碗蒸し、炊き込みご飯、麺つゆ、鍋料理。
さまざまな料理にだしが使われます。
そのため営業前に、ある程度まとまった量のだしを仕込んでいる飲食店も多いと思います。
しかし、ここで一度考えてみたいのが、
すべての料理に、同じだしが本当に必要なのか
ということです。
吸い物では、だしそのものの香りや余韻が重要です。
一方、煮物では具材や調味料も加わります。
炊き込みご飯では、米や具材の味と一体になります。
麺料理では、醤油や味噌などのかえしとのバランスも重要です。
つまり、同じ「だしを使う料理」でも、だしに求める役割はそれぞれ違います。
和食のだし取りを効率化するためには、単に仕込み時間を短くするだけでなく、
料理ごとに必要な旨味を考えること
から始める方法があります。
「大きな鍋で一種類」から考え直してみる
従来の仕込みでは、
朝に大きな鍋で基本のだしを取る
↓
さまざまな料理へ使用する
という方法があります。
大量に使う店舗では、とても合理的な方法です。
一方で、
- 吸い物には繊細なだしが欲しい
- 煮物にはもう少し旨味が欲しい
- 麺には魚介の風味を出したい
- 炊き込みご飯には素材を邪魔しないだしが欲しい
というように、料理ごとに求める方向が違う場合もあります。
そこで、
一種類のだしを料理に合わせるのではなく、料理に合わせてだしを組み立てる
という考え方ができます。
カツオ・昆布・椎茸・いりこは役割が違う
カツオ、昆布、椎茸、いりこ。
どれも和食のだしに使われる素材ですが、料理に与える印象は同じではありません。
ここでは難しい成分の話よりも、料理でどう使い分けるかという視点で整理します。
カツオ|香りと和食らしいだし感を出したいとき
カツオは、旨味だけでなく香りによって料理の印象を作りやすい素材です。
昆布が料理全体の土台を支えるのに対して、カツオを加えることで「だしを感じる」輪郭が出やすくなります。
たとえば、
- 吸い物
- うどん・そば
- 煮物
- 茶碗蒸し
- めんつゆ
- お浸し
- だし巻き卵
など、和食の幅広い料理で使いやすい素材です。
昆布|料理全体の土台を作りたいとき
昆布は、料理の味を前面に強く出すというより、全体を支える土台として使いやすい素材です。
たとえば、
- 吸い物
- 湯豆腐
- 鍋
- 野菜料理
- 煮物
- 炊き込みご飯
など、幅広い和食に合わせやすい素材です。
特に、魚や野菜そのものの味を活かしたい場合には、
「昆布を中心にして、必要なら別の旨味を加える」
という考え方が使いやすくなります。
椎茸|旨味の厚みや余韻を加えたいとき
椎茸は、昆布とは違った旨味と独特の香りを持っています。
そのため、
- 煮物
- 精進料理
- 炊き込みご飯
- 野菜料理
- あんかけ
- つゆ
などで、味にもう一段厚みを持たせたいときに使いやすい素材です。
ただし、料理によっては椎茸の香りを強く出したくない場合もあります。
その場合は、
椎茸だけでだしを作るのではなく、昆布を土台に少量の椎茸を加える
という方法も考えられます。
いりこ|魚介の旨味や輪郭を出したいとき
いりこは、昆布や椎茸に比べて魚介らしい風味を感じやすい素材です。
そのため、
- うどん
- そばつゆ
- 味噌汁
- 煮物
- 鍋
- 魚介系の汁物
などに向いています。
特に、
「昆布だけでは少し弱い」
という料理に、いりこを組み合わせることで、味の輪郭を作りやすくなります。
「単独で使う」より「組み合わせる」と考える
和食のだしを効率化するときに重要なのは、
かつおか、
昆布か、
椎茸か、
いりこか、
一つだけを選ぶことではありません。
むしろ、
料理に必要な役割を組み合わせる
と考える方が使いやすくなります。
たとえば、
昆布+カツオ
和食らしいだし感と香りを出したい場合。
吸い物、茶碗蒸し、煮物、麺つゆ、だし巻き卵など、幅広い料理に使いやすい基本的な組み合わせです。
昆布+椎茸
料理全体の土台を作りながら、旨味に厚みを加えたい場合。
煮物、野菜料理、炊き込みご飯などに使いやすい組み合わせです。
昆布+いりこ
昆布を土台にして、魚介らしい旨味を加えたい場合。
味噌汁、麺類、煮物などに使いやすい組み合わせです。
昆布を中心にする
吸い物や野菜料理など、主役の素材を前に出したい料理では、昆布を中心に考える方法があります。
このように考えると、
「何だしを使うか」から、「何の旨味が必要か」へ
発想を変えることができます。
これで、
昆布=土台
カツオ=香り・和食らしさ
椎茸=厚み・余韻
いりこ=魚介感・輪郭
吸い物と煮物では、だしの役割が違う
たとえば吸い物では、口に含んだときのだしの香りや味そのものが、料理の印象を大きく左右します。
そのため、
だし取りそのものに時間をかける価値が高い料理
と考えられます。
一方、煮物では、
- 野菜
- 魚
- 肉
- 醤油
- みりん
- 砂糖
など、さまざまな味が重なります。
この場合、だしは主役というよりも、
料理全体を下から支える役割
になる場合があります。
つまり、
吸い物
→ だしそのものを丁寧に作る
煮物
→ 必要な旨味を料理の中へ加える
というように、同じ和食でも仕込み方を変えることができます。
茶碗蒸しは「だしの安定」が重要
茶碗蒸しでは、だしの味が卵液全体にそのまま反映されます。
そのため、
- だしの濃さ
- 塩味
- 卵との比率
が毎回変わると、仕上がりも変わりやすくなります。
こうした料理では、
「何となく同じだし」ではなく、一定の配合で作れること
が重要になります。
水量と使用するだし素材の量をグラムで固定できれば、レシピ化もしやすくなります。
第3回で取り上げた「味の安定」という考え方が、ここで実際の料理につながります。
「飲食店の味を安定させる方法|だし・スープの味が日によって変わる原因」
炊き込みご飯では「だしを別に仕込む」必要があるか考える
炊き込みご飯では、米が調味液と一緒に加熱されます。
つまり、吸い物のように完成しただしだけを飲む料理とは違います。
そこで、
あらかじめ大きな鍋でだしを取ってから使う
という方法だけでなく、
必要な水量に、
- 昆布
- 椎茸
- いりこ
などの旨味を料理に合わせて加えるという方法も考えられます。
たとえば、
野菜中心なら昆布+椎茸。
魚介中心なら昆布+いりこ。
というように、具材に合わせて設計できます。
これは、**「だしを作ってから料理する」のではなく、「料理の中でだしを作る」**という考え方に近くなります。
麺類では「かえし」と「だし」を分けて考える
うどんやそばなどでは、
だしだけで味が決まるわけではありません。
醤油、塩、みりんなどによる「かえし」と、だしのバランスによって味が決まります。
そのため、
だしを強くしすぎる必要がない料理もあります。
昆布を土台にしながら、
魚介感を出したければいりこを加える。
厚みが欲しければ椎茸を少量加える。
このように考えれば、料理ごとに必要な旨味を調整できます。
一般的な素材粉末では「粉にしただけ」で工程がなくなるとは限らない
昆布や椎茸、いりこを粉末にすると、計量や保存はしやすくなります。
しかし、
粉末にしただけで、すぐにだしとして使えるとは限りません。
乾燥素材を単純に粉砕した粉末の場合には、素材から旨味を取り出すために、
- 加熱
- 煮出し
- 一定時間の抽出
が必要になることがあります。
その場合、
同じ5gを使っても、温度や時間によって料理へ出てくる味が変わる可能性があります。
つまり、
粉末化=だし取り工程がなくなる
とは限りません。
PRE-TASUなら料理の中で必要な旨味を組み立てやすい
PRE-TASUでは、昆布、椎茸、いりこなどを瞬間高温高圧焼成法で加工しています。
素材組織が変化しているため、従来の素材のように長時間煮出す方法だけでなく、水や料理に加えて混ぜ、短時間で素材の旨味を利用するという使い方ができます。
そのため、
昆布○g
+
椎茸○g
あるいは、
昆布○g
+
いりこ○g
というように、料理に合わせて素材ごとに配合を変えやすくなります。
これは完成した一種類のだしを使用する方法とは少し違います。
料理にだしを合わせるのではなく、料理に必要な旨味を組み立てる。
PRE-TASUでは、この使い方が一つの特徴になります。
500mlだけでも料理ごとに作れる
たとえば営業中に、
煮物用に500ml。
茶碗蒸し用に1L。
麺用に500ml。
というように、料理によって必要量が違う場合があります。
それぞれ別の大鍋でだしを取るのは現実的ではありません。
必要な水量に対して素材の使用量を決められれば、
料理ごとに500ml・1L単位でだしを作る
という方法が使いやすくなります。
これは第5回で取り上げた「小ロット調理」「追いだし」ともつながります。
「必要な分だけだしを作る方法|飲食店の小ロット調理と食品ロス対策」
「基本だし+調整」という方法も使いやすい
すべての料理を完全に別々に作る必要もありません。
たとえば、
基本
昆布を中心としただし
を用意しておき、
煮物
+椎茸
麺類
+いりこ
魚料理
+魚介系素材
というように、基本だしを料理ごとに調整する方法も考えられます。
これなら、従来の仕込みをすべて変えずに始めることもできます。
和食のだし取りを効率化する5つの考え方
- すべての料理に同じだしを使う必要があるか考える
- だしが主役の料理と、下支えの料理を分ける
- 昆布・椎茸・いりこの役割を料理ごとに使い分ける
- 大量仕込みと小ロット調理を使い分ける
- 完成だしではなく、必要な旨味を組み立てる
効率化とは、
だしを簡単にすること
ではありません。
料理に必要なところへ、必要な時間と手間を使うことです。
「だしを取る」から「だしを設計する」へ
和食では、だし取りそのものが重要な料理があります。
そこを無理に省略する必要はありません。
一方で、
煮物、炊き込みご飯、麺類など、料理の中でだしが他の素材や調味料と一体になる場合には、
必要な旨味を料理の中へ直接組み立てる
という考え方ができます。
昆布を土台にする。
椎茸で厚みを加える。
いりこで魚介感を加える。
料理ごとに必要な役割を考えれば、
一種類のだしを大量に作って使い回す方法だけではない
新しい仕込み方が見えてきます。
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