ハイスペックな発酵食品《甘酒》を管理栄養士が解説!

目次

1.甘酒とは

1-1:昔から親しまれてきた発酵食品

 「甘酒」と聞いて、みなさんが思い浮かべられるのは、酒粕由来の甘酒でしょうか。それとも麹由来の甘酒でしょうか。

発酵ブームと言われるようになってから、いろいろな発酵食品がメディアにも取り上げられ、その中でも甘酒は栄養価も高く、手軽に作ることも手に入れることも可能なため、甘酒は発酵食品であるという認知も高くなってきたように思われます。

甘酒の起源は古く諸説もありますが、古くは中国の醸斉(こせい)と考えられています。もともとは「斉」は神を祭るための酒、「酒」は人が飲用するための酒という意味で使い分けられていましたが、時が経つにつれてその区別はなくなり「酒」で統一されるようになっていきました。

日本では「醸酒(こさけ)」「天甜酒(あまのたむざけ)」「糟湯酒(かすゆざけ)」という言葉が日本書紀や万葉集などの文献に記載されており、その作り方や飲み方を紐解くと、現在の甘酒につながるとみられています。ちなみに、醸酒と天甜酒が麹由来、糟湯酒が酒粕由来のものであろうと考えられています。

いまの甘酒という言葉になってきたのは、戦国時代末期から江戸時代にかけてです。様々な書物や俳句などで見られるようになってきました。

寒い季節に飲むというイメージ強いかと思いますが、甘酒売りという商売があり、夏の暑い時期に売られていました。当時は冬の寒さで亡くなるよりも、夏の暑さで亡くなる方が多かったようです。そのため夏バテ防止、疲労回復のための飲み物として夏の必需品となりました。

1-2:飲む点滴」「飲む美容液」と言われる由縁

 まず、甘酒の成分を見てみましょう。

・ブドウ糖

生命維持のために必要なエネルギー源であり、甘酒の成分のうち、約20%を占めます。

・必須アミノ酸

人の身体は約20種のアミノ酸で構成されており、うち9種類は体内生成できず、食事から摂る必要があります。新陳代謝の促進や疲労の軽減、神経の働きのサポートやホルモンの生成、免疫機能のサポートなど、非常に大切な働きに関与しており、甘酒は9種類全て含んでいます。

・ビタミン類

人が生きていくために必要不可欠な三大栄養素(炭水化物、タンパク質、脂質)の代謝を助けるための潤滑油のような働きをするのがビタミンです。甘酒においては特にビタミンB群が豊富です。

・食物繊維、オリゴ糖

腸内環境は善玉菌・悪玉菌・日和見菌の3種類の菌のバランスによって、健康状態が変わってきます。善玉菌が多い環境が理想的です。善玉菌が優位になるにはエサである食物繊維とオリゴ糖が必要です。腸のぜん動運動促進や腸の炎症抑制などの効果が期待されています。

また、免疫に関する細胞の約70%が腸内にあるため、腸内を整えることは免疫力の向上にも役立ちます。

・麹に由来する酵素

酵素は消化や代謝、循環において必要不可欠なもので、麹が発酵する過程で生成される酵素は豊富で、「酵素の宝庫」とも言われております。

・コウジ酸など

コウジ酸は米麹に含まれるもので、メラニン生成を抑制し、シミを予防する働きがあります。今や化粧品などにも活用されている成分です。

これ以外にも沢山の成分が含まれている甘酒。

特にブドウ糖、アミノ酸、ビタミンについては点滴の成分にも匹敵するため、「飲む点滴」と言われており、コウジ酸などの効果が「飲む美容液」と言われている由縁なのです。

1-3:甘酒の種類

甘酒には酒粕由来のものと、麹由来のものがあります。原料はそれぞれ至ってシンプル。

・酒粕由来→酒粕+砂糖+水

・米麹由来①→米麹+ご飯→「かた造り」7~10時間

・米麹由来②→米麹+ご飯+水→「うす造り」7~10時間

・米麹由来③→米麹+水→「早造り」4~6時間

 よく作られるのは②か③が多いかと思います。発酵の過程は後述しますが、その名の通り、③が出来上がり時間は早く、作りやすいのでおススメです。

2.なぜ甘酒が健康に良いのか

2-1:麹と麹菌

麹とは米や大豆などの穀物を蒸して麹菌を繁殖させたものを言います。外見はモフモフとした綿のようなものが全体を覆っており、それは花が咲いたように見えるため「糀」という字が作られたと言われています。

麹菌は日本をはじめ、東アジアや東南アジアの高温多湿の地域にしか生息していません。日本の代表格である味噌や醤油、清酒や焼酎泡盛などを作るために必要不可欠であり、日本独特のものであるということで、国の菌として2006年に日本醸造学会で認定されています。

では麹菌はどのような働きをしているのでしょうか。

麹菌も生き物であるため、穀物に含まれる栄養を糧にして様々な代謝物を生成します。この代謝物が酵素やビタミン、オリゴ糖など、私たちにとって必要なものなのです。

しかし、穀物に含まれる栄養素は麹菌以外の菌も繁殖のために必要なので、栄養を巡って縄張り争いをします。この争いに負けないように菌糸という腕のようなものを伸ばしてバリアを張ります。バリアを張ることで安定した条件を作り出すことができ、他の菌を寄せ付けることなく繁栄が可能となるのです。これが、麹ができるまでの営みなのです。

2-2:酵素と火入れ

麹菌が生成する酵素は多々あり、その代表格としてアミラーゼが挙げられます。アミラーゼはでんぷんをブドウ糖に分解する酵素であり、人間が甘みを感じるブドウ糖というサイズに分解してくれるので、甘酒は砂糖を入れなくても甘くなるのです。このように甘くなる工程を糖化と言います。

酵素が最大限力を発揮するためには、特有の環境を整える必要があります。それは温度であったりpHであったり、様々です。アミラーゼは大体55~60℃の温度が最適と言われています。これより低いとアミラーゼはあまり作用しないので、分解されてできるブドウ糖の量が少なく、甘くなりません。また、これより温度が高いと失活してしまいます。

 この温度を利用して、酵素の働きをコントロールすることを「火入れ」と言います。わざと温度を高くして酵素の働きを止めるのです。

酵素は最適な温度下では、穀物の栄養素がある限りずっと分解し続けます。そのため、味は変化しやすいですが、酵素は生きているため分解力が高く、消化吸収もよくなるため身体への負担も少ないのが特徴です。いわゆるこれが「生甘酒」です。

一方、火入れをすると酵素は失活しますが、味は変化せず品質が安定します。分解スピードは生甘酒より遅く、熱により栄養価が一部失われてしまうことが懸念されます。一般的には品質安定のため市販の甘酒は火入れをしているものがほとんどです。

そのため、より高い栄養価を期待するのであれば生甘酒です。ただ、市販で手に入れるには中々難しいため、自分の好きな量やタイミングでできる手作りがおススメです。

手軽に作れるメリット、更に栄養価が高い状態で摂取できる甘酒や、継続できる簡単な方法などは次回、乞うご期待!

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管理栄養士 発酵マイスター 山田 かなゑ

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