株式会社瀬戸プレスフーズの商品「焼大豆フレーク」における遊離アミノ酸濃度について試験したところ興味深い結果となったとのことで、今回焼大豆フレークの使用メリットおよび活用用途について考察したいと思います。
実験方法
株式会社瀬戸プレスフーズの商品「焼大豆フレーク」と市販の炒り大豆を人工消化液で消化。消化後、各試料に含まれている遊離アミノ酸濃度を分析。
結果
同一時間の消化による遊離アミノ酸濃度の増加はほぼ同等の結果となりました。
しかし、消化前の遊離アミノ酸濃度は焼大豆フレークが炒り大豆の約1.6倍であり、焼大豆フレークは未消化の状態であっても溶出する遊離アミノ酸が多いことがと分かりました。
考察できる焼大豆フレークのメリットおよび用途について
アミノ酸はたんぱく質が分解された最小の状態で、体内への吸収がたんぱく質だと約3~4時間かかるのに対しアミノ酸は約30分と速く、消化器官の負担が少ないことが特徴です。
試験結果より消化前の焼大豆フレークに含まれる遊離アミノ酸量が炒り大豆より多い点に着目すると、たんぱく質を分解する工程が軽減されるうえ、体内において消化酵素の使用量も少なく、より多くのアミノ酸を短時間で吸収できる可能性があると言えます。この特徴から焼大豆フレークが活かせる分野と用途について以下に考察します。
➀高齢者へ
加齢に伴い、胃腸をはじめ内臓も老化していきます。併せて消化酵素や消化機能も低下し、希望の食べ物が食べられない、食欲の減少なども起こり必要な栄養を摂取することが難しくなってしまう可能性もあります。特に高齢者が気をつけたいフレイルやサルコペニアにおいて「たんぱく質」は欠かすことのできない栄養素のひとつです。
そこで、たんぱく質補給に焼き大豆フレークは有効と考えます。
常食からミキサー食、ムース食まで料理に栄養補助食品の代わりに加えて加工も可能。さらに料理の際、材料のひとつとして使用すれば、調理担当者も難しい作業工程も必要なく、通常の食事でたんぱく質の補強ができると考えます。
②アスリートや運動愛好者へ
厳しい練習に励んでいるアスリートにおいては、練習後は疲労回復のため素早いリカバリーが必要です。しかし、疲労は筋肉だけでなく内臓も疲労を抱えています。
そのため、内臓に負担をかけず、なおかつ素早い栄養補給が必要となってきます。
食事に焼大豆フレークを加えることで、良質なたんぱく質を素早く補給することができ、疲労回復や筋肉の形成に役立ちます。
③運動時の補食や水分補給に
練習中においても練習をこなすためのエネルギー、たんぱく質を補給することが必要です。
焼き大豆フレークを補食に活用(おにぎり等に混ぜ込むなど)することで、素早いたんぱく質補給につながります。
また、短時間の運動においては水分補給として、だし汁も有効です。だし汁に溶け込んでいるアミノ酸やビタミン類、ミネラルはスポーツ飲料と同様に水分と運動時に損失する栄養素の補給ができます。そこに焼大豆フレークを粉砕して加えるとたんぱく質補強になります。
④胃ろうからの初期食へ
高齢者や障害者など胃ろうを利用されている方へ、現在胃ろうからの栄養摂取において、医
師の指示のもと、現在処方されている栄養剤以外にも食事をミキサー食(以下、初期食)に
加工し、シリンジで注入を実施する例も増えてきています。
初期食の利点としては、栄養剤より粘度が高いことから胃での滞在時間が長く消化吸収がゆっくりと行える点、経管栄養剤のみでは補いきれない必要な栄養素を自然由来の食物から摂ることができ、栄養状態や消化機能の改善が期待できます。
焼大豆フレークを初期食として、ミキサー食へ追加加工することで、自然由来のたんぱく質補強になり、なおかつ消化機能の弱い胃ろう対象者の負担軽減と安全な食事提供に繋がると考えます。
上記のように焼大豆フレークは、さまざまな対象者に応じてたんぱく質補給として活用することができる可能性があります。
遊離アミノ酸濃度が高い商品はさまざまな分野で活用できる
今回の試験より、焼大豆フレークに含まれている遊離アミノ酸濃度は未消化の時点で多いことから、高たんぱく質の補給を体への負担が少なく吸収できる商品であることが分かりました。
このメリットは、消化機能が低下している高齢者や障害者、アスリートや運動愛好者など広範囲の対象者の栄養補給に活用できることが考察できました。今回考察した用途以外にも活用範囲は多義にあるでしょう。
さらに、自然由来で効率的な栄養補給ができる点、調理担当者も取り扱いしやすい点は魅力的であり、導入する価値のある商品であると考えます。
《参考資料》最終観覧日:2023年8月31日
東京都教育庁都立学校教育部特別支援教育課 胃ろうからの初期食シリンジ注入に関するガイドライン (改訂版)
管理栄養士 山田 美穂